雨の情景とメロディー

音楽随想

淡い愁いを帯びたブラームスの歌曲「雨の歌」(1873)。雨と共に呼び覚まされる幼少時の美しい記憶をうたったグロートの詩に付曲されたこの作品は、クララ・シューマンへの誕生日プレゼントだったそうで、「クララ・コード」とも言われるメッセージ性の強い動機(画像上段の赤丸参照)が隠れています。この動機は、ルネサンス期ドイツのハスラー(1562-1612)の世俗歌曲 Mein G’müth ist mir verwirret「我が心は千々に乱れ」の主題が後にバッハのマタイ受難曲(1727-29)に用いられたもので、ブラームスはこの動機を自らの人生を重ねるかのように繰り返し引用しています。

決して鬱陶しくない心潤す雨の情景が目に浮かぶようで、でも、どことなく漂う物哀しさに心を揺さぶられる旋律を、ショパンのピアノのための前奏曲「雨だれ」(1838-39)と比較してみたいと思います(画像下段の赤丸参照)。赤丸部分が「クララ・コード」に当たりますが、その後の赤括弧部分まで、完全4度、長2度、長2度、短2度、長2度、長2度、短2度の順で、全くの反行形になっているのです。偶然なのか意図されたものなのか、想像は膨らむばかりです。

岩渕

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河野泰幸

クラリネット奏者。

京都市立堀川高等学校音楽科、東京藝術大学音楽学部器楽科を経て、シュトゥットガルト音楽演劇大学大学院修了。

在独中、リューベック歌劇場、プフォルツハイム市立劇場のクラリネット奏者として研鑽を積む。第10回京都芸術祭で京都市長賞受賞。

Trio Rintonareでのコンサートが評価され青山財団より2008年度バロックザール賞受賞。札幌音楽家協議会会員。

現在、札幌大谷大学芸術学部音楽学科准教授、札幌大谷高校音楽科非常勤講師。2015年より札幌在住。

詳細、過去の演奏会はこちらをご覧ください。

岩渕晴子

ヴァイオリニスト

京都市立堀川高校音楽科を卒業後、奨学生として英国王立音楽院Royal Academy of Music(ロンドン)に留学。音楽学士号BMus、教師資格LRAM、および大学院演奏ディプロマPGDip取得。

ブリストル大聖堂(イギリス)、エネスク・バルトークホール(ルーマニア)、青山音楽記念館バロックザール(京都)等にてリサイタル開催。

室内楽演奏会「ロンドン~室内楽の散歩道」「0歳からのファミリーコンサート」等主宰。イザイの無伴奏ソナタ全6曲、ヴァイオリン小品集の2枚のCD録音。国内外のオーケストラと共演を重ね、2010年いずみホール(大阪)にてモーツァルト室内管弦楽団と、2013年ルーマニアにてハーモニアス室内管弦楽団と、2014年及び2018年オラデア音楽祭(ルーマニア)にてオラデアフィルハーモニーと協奏曲共演。

兵庫芸術文化センター管弦楽団第1期コアメンバー、ヤマハなんばセンターヴァイオリン講師、ヤマハジュニア弦楽アンサンブルおよびオーケストラジュニア講師を経て、2015年より札幌市に拠点を置く。独奏、室内楽、オーケストラ奏者として演奏活動を行い、2019年ザ・ルーテルホール共催による企画ミュージック・トゥモーロ―ではピアノの岡本孝慈氏と共にブラームスのクラリネット・ソナタ(作曲家自身の編曲によるヴァイオリン版)を取り上げた。

詳細と過去の演奏会、動画はこちらをご覧ください。

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